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社告:はがき随筆 25日に年間大賞発表・表彰式--別府・ニューツルタ /大分

http://mainichi.jp/area/oita/news/20090403ddlk44040698000c.html

 毎日新聞大分面に掲載している「はがき随筆」の昨年の最優秀作を決める「年間大賞発表・表彰式」を25日(土)午前11時から、別府市北浜1の14の15のホテルニューツルタ(電話0977・22・1110)で開きます。奮ってご参加ください。
 月間賞12編(文末は掲載日、作者の年齢は当時)の候補作から、大賞1編、優秀賞2編、読者賞1編の計4編を表彰します。読者賞は最も読者の心に残った作品で、皆さんの投票で選んでもらいます。
 ◇心に残る一編選んでください
 あなたの心に最も残った作品名と一口評を書き、1人1作品をはがきかファクスで投票してください。締め切りは18日。住所、氏名、年齢、電話番号、「読者賞投票」と明記し、送り先は毎日新聞大分支局(発表・表彰式参加申込先と同じ)。投票いただいた方から抽選で3人に粗品を進呈。発表は発送をもって代えます。
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 ◆「はがき随筆」08年月間賞作品
 ◇ガックン--日田市・瑞穂キヌエ(73)
 冬の山暮らしに四輪駆動車は欠かせない。私は歩くことに慣れている。毎日の散歩時、何台かの車と会う。来るたびに横に寄り、ガックンと頭を下げる。
 ある夜、息子が「あんた、俺(おれ)の車知っちょるかい」と言う。「知っちょるが、ナンバーは知らん」「そうじゃろう。ニコッと笑って頭を下げた」「ワッハッハ、そりゃ知らんやった」「それでも悪い気はせん。俺もつられて下げた」
 私は考えた。頭下げるのに税はかからん。首の運動にもなる。運転手も気持ちがよければ事故もせぬだろう。20年来のモットーである。(1月6日)
 ◇春待つ--日中津市・中原八重子(82)
 春は名のみの風の寒さよ。
 詩さながらの立春の声に、自然は急テンポで春に向かっているが、昨年末の入院と手術から立ち直れず心だけが立ち止まり空回り。一人もがく。
 人は年を重ねたとき老いるのではなく夢を失ったとき老いるのである、等々、さまざまな言葉が飛び込んで来る。年齢は女の勲章とも--。
 賞味期限も迫っている老婆は「ピンピン、コロリ」を切望する。小さな幸福の破片を拾い集めささやかな人生の終わりを迎えたい。晴れたブルーの空、麦の緑が映え目を癒やしてくれる。春迎えの花がひっそり咲く。(2月20日)
 ◇待つということ--別府市・河野靖朗(71)
 太陽に「もういいかい」と蕗(ふき)の薹(とう)。万物は春の光を待ちわびている。春の気配が地に満ちると、ふと人の心はなまめく。草青み一時に木々が芽吹くと人々は大自然に生命力を感じる。大地の息吹が漂ってくる。
 凜冽(りんれつ)な冬の厳しさから気長に春を待つことは人生の喜び。木の芽和(あ)えも若芽和えも蕗みそも1年を確(しか)と待つ。とまた至福の時が来る。今は結論を急ぐ時代とか。みみっっちいほど気短になる。未来を視野に入れない。待つより迎えにゆく。「待てない社会」となる。青ぬたで一杯やりながら、日本人は大切なものを失っているなと思う春の宵。(3月6日)
 ◇喜びも相半ば--豊後大野市・合澤美博(78)
 山が動く。渓谷の雑木はみずみずしい萌黄色(もえぎいろ)の装いに。豊かな陽目(ひなため)の清流、鳥の声は崖(がけ)から降る。茅葺(かやぶき)茶屋は4月まで休店だった。荻の里は春らんまん。施設入居の兄を誘い、兄弟3人折々の半日を温泉郷に遊んで、健やかなるを喜ぶ。浴場で見る久住山は正面、黒岳は妊婦お多福の仰臥(ぎょうが)の姿だ。帰途、50年住んだ兄の家に寄る。売家の立て札が塀にもたれて傾く。白壁がはげ、軒の庇(ひさし)は破れた。木戸を開けば腐葉は散り敷き、植木にかずらが絡む。台風に備えなき家屋の果て。「どうしようもない」。兄の一言。過疎集落で見る売家の無念の末路を思う。(4月30日)
 ◇原油と小麦粉--宇佐市・市丸宗人(66)
 卯月晦日(うづきみそか)の夕刻、1時間待ちで給油。車列延々、国道まではみ出す。ガードマンが国道には停車できないと指示するも効果なし。退勤時と重なり渋滞。警察のおでまし。同夜のテレビ報道よりわが体験の方が過激だ。
 さつき朔日(ついたち)、北海道オホーツク海側で真夏日、沖縄の方が低温。わが限界集落では19・2度だった。暫定ガソリン税は25円余。失効時(値下げ)は20円、復活時(値上げ)30円とは庶民には理解しづらい。
 気象も物価も値上げラッシュ。空気の読めない為政者。与党も野党も理性に訴える政治家たれ。75日過ぎても忘れない。(5月14日)
 ◇夏つばき--別府市・佐原香織(35)
 学生時代、「平家物語」の冒頭部を暗唱した。当時は祇園精舎も沙羅双樹(さらそうじゅ)も、意味が分からないまま、ただ覚えた。
 数年前、父が庭に植えた夏つばき。実は平家物語に出てくる沙羅双樹らしい。ただ、植えてから一度も咲いたことがなく、我が家では幻の花となっていた。それが今年初めて白く可憐(かれん)な花を咲かせてくれ、これが「盛者必衰の理をあらわす」のかと感動。ふと父に「うちが衰えたりしないかな」と尋ねると、「うちはまだ栄えていないから大丈夫だ」と自信たっぷりに断言された。夏つばきも我が家も、まだまだ育ち盛りのようだ。(6月12日)
 ◇言葉--別府市・柴田初子(68)
 娘の嫁ぎ先のお義母(かあ)さんが亡くなった。享年80歳。高血圧と高血糖を気づかって、減塩し、甘い物も控え目にした食事を心がけていた。
 「こうなるんだったら、もっとおいしい物を食べさせてあげればよかった。私って鬼よね。鬼だったのよね」と意外なことを言う。完全な人はいない。私だって、母を亡くした時は、自分を責めたし、あの日から今まで心の闇が晴れることはない。大切な人を亡くして、初めて気づくことの何と多いことか。
 「道子さんによくしていただいてます」。最期に聞いたお義母さんの言葉が今も耳に残る。(7月30日)
 ◇悲しい戦争--竹田市・三代律子(74)
 8月は涙の月と思う。国が敗れてどれだけの人が悲しい思いをしたであろうか。自分の意思ではない戦死とは? 残された親、妻子のことは思うに余りある。レイテの海へ散った若い優秀な兵士たちも。
 知覧にて遺書を読んだ。「母上住む上空を飛びます」の一言のみ。「蛍になって帰っておいで」と母。泣きたくても泣けない時代だった。
 私は帰国子女。現地に残された幼い兄妹を忘れない。しっかりと手をつないで母の帰りを待っていた。絶対に帰ることのない母親を信じて。「待っていようね」としか言えなかった。今も涙あふれる8月である。戦争? 疑問で空虚である。(8月14日)
 ◇晩夏--宇佐市・丹生良子(75)
 朝、見渡しの竜王山はもやの中に浮かんで見える。空気はすでに秋のにおい。朝日がもやに赤くにじんで昇ってくる。沈む月は西の空に白い。
 快晴。一片の雲も無い。やがて山を包んでいた朝もやが、音もなく動いて薄れてゆく。向山の稜線(りょうせん)が現れてくる。露をはらんだ稲穂に朝日が届いて光る。美しい。
 あの暑かった夏はもう過ぎ去った季節。母が残した日誌の中に「まっさらな一日が始まる」とある。まさに。母の逝った年まではあと25年。こんな朝は、今少し元気でこの世にとどまっていたいなと思う。(9月7日)
 ◇覚悟--宇佐市・香下広子(60)
 山へむかう道の雑木林に、誰が捨て置いたのか麦わら帽子。秋雨に濡(ぬ)れ朽ちて枯れ葉に埋まり、木漏れ日も届かない。ふと古代の棄老伝説を思い出す。60歳を迎えた老人は、口減らしのため山に捨てられる。拒みもせず子に背負われ山を登りゆく。
 私も60となった。恐れなく逝く覚悟などできぬ。姉より祝福の電話。「身辺整理をしないとね」と笑って諭す。母のように優しい姉。受話器を置いた次の瞬間にも、別れのときがくるかもしれぬ。会者定離、世のすべて風の音さえ懐かしく悲しい。
 この一瞬を、心こめて精いっぱい生きぬく覚悟をもちたい。(10月7日)
 ◇ねたきり--別府市・塩月光子(66)
 「寝たきりになるぐらいなら、潔く死を選ぶ」とテレビで女性の声。何気ないひとことなのに、寝たきりの主人と介護中の私の心が一瞬凍る。
 「寝たきりは急変しやすい。将来的にも重大な事態が起こり得る」と、本人を前に声高な医療従事者。慣れからか、寝たきりの主人を「この人」と言ってしまった介護士。
 身体は寝たきりでも、心は寝たきりにあらず。目尻からスーと流れるひとしずくに無念を思う。と、猫がその顔の上にくしゃみを飛ばした。ニャロメ!
 明日は秋を眺めに、車で出かけようかな……。(11月5日)
 ◇母の微笑--大分市・安部康晴(73)
 仏壇の位牌(いはい)の裏に昭和15年12月28日とある母の忌日。壁につるす額縁の顔写真は微笑を送り続ける。46歳で逝った明治の母。朝夕に掌(てのひら)を手向け「母さん!」とつぶやきの朝、臘灯(ろうとう)に火を線香に煙をたなびかせる。追憶のかなたを瞑想(めいそう)の午後、脳裏に浮かべる母と愚生6歳の園児の写真。白いエプロンに甘えすがって、その小さな肩に優しく手を添え、玄関前の径(こみと)で一枚のスナップ。庭芝はいまだ青じゅうたんで威張っているが、程なく霜枯れる深秋の一刻。この写像を飽きもせずまぶたに、そして現今、未来の命尽きるまで懐に忍ばせ、せめて母への孝。(12月3日)
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 ◇APU副学長・是永さん記念講演、賞状は斉藤さんが揮毫
 「はがき随筆」が大分面で始まって今月で25周年になるため、立命館アジア太平洋大(APU)の副学長、是永駿さん(65)に記念講演をしていただきます。演題は「風刺とユーモア」です。
 是永さんは大阪外語大学長を経て、昨年4月、APUに教授で着任。中国語・中国文学を専攻し、特に中国詩に造詣が深く、孤高の漂泊詩人の作品を訳・編集した近著に「北島(ペイタオ)詩集」があります。北九州市出身で、大分市育ち。大分大助教授も長く務めた大分とはつながりの深い方です。
 賞状の揮毫(きごう)は、昨年の毎日女流書展で大分県知事賞に輝いた書家で鶴崎工高・情報科学高講師、斉藤範子さん(30)です。墨の香りをお楽しみください。県立芸術文化短大2年の松尾美幸さんに入賞作品を朗読してもらいます。

 ◇懇親会で交流も
 式後は懇親会も行います。作品づくりの工夫などを意見交換し、随筆が取り持つ交友の輪を広げましょう。別府湾を一望できる温泉にも入れます。未投稿の方も参加できます。
 【日程】午前11時=記念講演▽午前11時50分=発表・表彰式▽午後0時50分=懇親会
 【会費】講演、発表・表彰式600円(記念写真代を含む)▽懇親会2500円
 【申し込み】発表・表彰式、懇親会それぞれの出席の有無を明記し、はがきかファクスで21日までにお知らせください。送り先・問い合わせは毎日新聞大分支局(〒870-0023 大分市長浜町2の13の29、電話097・532・4131、ファクス097・532・4134)。

毎日新聞大分支局
by mo_gu_sa | 2009-04-03 17:01 | 大分


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