下水道の汚泥から金 諏訪湖の恵み? 長野・諏訪市の下水処理場に注目

http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/nagano/090307/ngn0903070323002-n1.htm

 下水場の汚泥から金が出た-。夢のような話題に米国のニュース専門放送局、CNNテレビが取材に訪れるなど、長野県諏訪市の下水道処理場が国内外で注目を集めている。汚泥を処理する過程で生まれる灰の中に金が含まれ、すでに2000万円以上の売却収入を得ているという。なぜ下水道の汚泥が宝の山に化けたのか。通貨不安で金の価値が上がり、さらにハイテクを支える産業用希少金属としての需要も高まる中、現代の錬金術の秘密を探った。(太田明広)

 本州の“へそ”に位置する諏訪湖に面した諏訪湖流域下水道豊田終末処理場。県諏訪建設事務所が管理するこの施設には、湖周辺の6市町村から生活排水や工場排水などの汚水が1日に約9万5000トンも流れ込む。

 汚水は、処理の過程で浄化水と汚泥に分けられる。汚泥はさらに脱水や焼却などの処理を経た後、灰になる。他の処理場では焼却灰はセメントに混ぜる建設資材として売却されるが、この処理場ではもう一段階、灰の処理が必要となる。

 灰に含まれる猛毒のヒ素が溶け出さないために、処理場内の溶融炉施設で約1600度の高温で灰を溶かした後、冷やして再結晶化させているのだ。同事務所の中山幹英・流域下水道課長は「周辺の温泉が流入し、ヒ素が多く混ざっているためです」と説明する。

 溶融する際に炉外に飛び散る溶融飛灰や溶融できない焼却灰などは、産業廃棄物として年間約700万円をかけて処分していた。このため、豊田終末処理場では、他の処理場よりも処理費用がかさむのが悩みの種だった。

 しかし、厄介ものが宝の山に変身したのは平成19年10月。同事務所は、溶融炉施設の老朽化に伴う新施設建設の参考にするため、日本下水道事業団(本社・東京都新宿区)に汚泥処理の有効活用について調査を依頼。その結果、溶融飛灰に高濃度の金が含まれていることが判明した。年間5トンの排出量に対し、約10キロの金が採れるという調査結果は、関係者を喜ばせた。同事業団によると、下水汚泥からカドミウムなどの金属が見つかることは珍しくないものの、金を検出した例は他にないという。

 同処理場では、昭和62年に汚泥に金が含まれていることが分かっていたが、金の相場価格が1グラム当たり約1500円で運搬などの経費をかけると赤字になるため、事業化は見送っていた。しかし、ここ数年で金価格が上昇して1グラム約3000円前後に。高濃度であることも分かったことから、愛媛県の金属精錬会社に売却を開始し、これまでに2000万円以上を売り上げた。

 「維持管理費が安くなると思い、本当にうれしかった」と中山課長。溶融施設の維持管理に年間約1億7000万円の経費がかかっていたが、売却収入はその一部に充てる。

 ところで、豊田終末処理場に集まる汚泥にだけ、なぜ金が産出されるのか。その理由は解明されていないが、県諏訪建設事務所では2つの有力な説を挙げる。

 その一つは、諏訪湖周辺に金メッキなどを扱う精密機械工場が1000社ほどあり、それらの工場から金が混ざった下水が排出されているのではないか、というもの。それぞれの工場では金を流出させない対策を取っているが、ごく少量が流れ出ている可能性があるという。

 もう一つは、「黒鉱ベルト」と呼ばれる貴金属を豊富に含む鉱床が諏訪湖周辺は地中深くにあることから、鉱床に含まれる金が温泉に溶け出した可能性も指摘される。処理場の近くには、戦国時代に武田信玄が金を採掘したとされる金鶏金山(茅野市金沢)跡もあるからだ。

 かつて東洋のスイスと言われた諏訪湖周辺に点在する精密機械工場群。さらに金属の鉱脈や温泉など、この地域特有のさまざまな要因もあって貴重な宝の山を生み出したのかもしれない。
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by mo_gu_sa | 2009-03-07 03:23 | その他


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