http://kyushu.yomiuri.co.jp/entame/onsen/info44/in_44_08011601.htm
長野県の温泉での入浴剤着色問題以来、温泉地では「100%源泉かけ流し」が利用者の心をつかむキーワードになっている。しかし、高温の源泉をうまく冷まして湯船に注ぐのは簡単ではない。経営者の頭を悩ませてきた問題を解決してくれる技術が、源泉数、ゆう出量とも日本一の大分県別府市で開発された。その装置は意外にローテク。関係者を驚かせている。 あちらこちらで湯気がわき立つ鉄輪(かんなわ)温泉。創業85年の老舗「ひょうたん温泉」の源泉からは、毎分500リットルの豊富な湯がわき出す。源泉温度は100度を超す。 冷まさなければ使えないが、水で薄めることは一切しない。効能が落ちるからだ。このため創業以来午後9時に施設を閉め、約10時間かけて適温にしてきた。 「まるで(湯が流れ込まない)たまり湯だな」。ひょうたん温泉社長の河野純一さん(57)は約10年前、入浴客がつぶやいた一言が悔しくてならなかった。「本物の温泉を提供しているのに、わき出る量に見合うお湯を湯船に注げない……。何とかしたい」 ◇ 温泉冷却装置「湯雨竹(ゆめたけ)」は約8年かけて完成。屋外の足湯と施設裏の源泉近くに設置した。 足湯用の装置は高さ約2メートル、幅約1・8メートル。屋根つきの木製の柵から束ねた竹の枝が垂直に飛び出し、一見すると、古い民家の門のようだ。屋根上のおけにパイプから源泉が注がれる。おけからあふれた湯は屋根をつたい雨のように竹の枝に流れ込む。何度も枝に当たって落ちる間に気化熱が奪われ、温度が下がるのだ。100度を超す源泉がわずか数秒で適温の約47度になるという。 「湯雨竹」を河野さんと共同開発したのは、温泉に関する著書もある大分県産業科学技術センター主任研究員の斉藤雅樹さん(40)。2人が参考にしたのは1940~60年代、兵庫県赤穂市などで塩作りに使われた「枝状架(しじょうか)」という器具だった。海水を無数の竹の枝の上に流し、気化熱で水分を飛ばす。今はほとんど使われていないが、斉藤さんは見た瞬間に「使える」とひらめいた。 ◇ 「湯雨竹」の効き目はすぐに表れた。2005年7月の設置完了後、施設の閉店時間は午後9時から午前1時に延長できた。営業時間が延び、売り上げも約3割増えた。「湯の良さがはっきりわかるようになった」と客の評判も上々。足湯を楽しんだ大分市の私立高校職員、幸和枝さん(28)も「湯船が熱くないのが不思議なくらい。快適ですよ」と笑顔だった。 河野さんは九州経済産業局の支援を受け、「湯雨竹」の販売にも本格的に乗り出した。問い合わせも相次いでおり、すでに長崎県・雲仙温泉の1施設で採用が決まっている。 「せっかくの地球の恵みをきちんとお客さまに還元できない悩みを抱える温泉は多いはず」と河野さん。全国で同じ湯の雨を降らせる夢に向かって意気込んでいる。 【写真】ひょうたん温泉の足湯に置かれた「湯雨竹」。屋根部分は湯気が上がるほどの熱湯だが、足湯は心地よい (2008年1月16日 読売新聞)
by mo_gu_sa
| 2008-01-16 00:00
| 大分
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