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@展覧会:「冒険王・横尾忠則」展 今につながる少年期の体験

http://mainichi.jp/enta/art/news/20080603dde018040030000c.html

 横尾忠則の大規模個展が、東京都の世田谷美術館で開催中だ。1960年代からグラフィックデザイン、絵画など幅広い表現領域で疾走を続け、近年もハイペースで新作を発表している横尾。初期のポスター原画や新作など約700点で作家の変わらない面、変わり続ける面の双方を見せている。

 展覧会名は、小中学生のころ夢中になった、南洋一郎の冒険小説や江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに由来する。これらを創造の源泉とし、物語を紡いできた。

 実際、90年代以降の絵画には、探偵団のような少年がしばしば描かれた。全国各地の温泉地をモチーフにした最新作には、怪人二十面相が登場。少年時代のワクワク感を持ち続け、現実と物語世界を独特の味付けで融合させている。

 一方の「変わり続ける面」とは何か。グラフィックから絵画、Y字路や温泉、ルソーの絵画に想を得た最新シリーズなどを挙げることができるだろう。

 双方を備えている作品もある。たとえば、半裸の女性の体をピンク色で描いた60年代の代表作を、新たな視点で描いた絵画だ。背景や色彩などを変え、一列に並べている。いわばセルフパロディー。幼少時代の体験や昔の作品が単なる「過去」でなく、すべて「今」につながっていることがよく示されている。

 開催中、アクシデントが起きた。世田谷区の64校中22校の小学4年を対象にした美術鑑賞教室が、直前に中止されたのだ。区教委は「小4には理解が難しいと総合的に判断した。特定の作品を問題にしたのではない」と説明。美術館は「残念だが、やむを得ない」という。

 横尾さんは「前近代的な意見だ。一見エロチックな作品を問題にしたのかもしれないが、僕自身はエロチックなものをブラックユーモアとして還元させてきた。子供は敏感に感じ取ってくれる。僕が冒険小説に夢中になった年齢の子供たちに同じ経験をしてほしかった」と残念がる。

 美術館は、学校活動を受け入れるだけの立場ではなく、積極的に芸術の意味を発信する役割もあるはずだ。区教委は、何に懸念を抱いたのかきちんと説明すべきだろう。せっかくの「鑑賞教育」が空々しいものになってしまう。

 15日まで。【岸桂子】

毎日新聞 2008年6月3日 東京夕刊
by mo_gu_sa | 2008-06-03 18:00 | その他


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