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(温泉食紀行)大分・長湯温泉 白濁の湯と薬膳パスタ

http://www.nikkei.com/life/gourmet/article/g=96958A96889DE2E4E0E0E2EBE5E2E0E1E2E6E0E2E3E285E3E7E2E2E2;p=9694E3E1E2E3E0E2E3E2E1E4E0E4
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 大分県中部の山間にある湯治の里、長湯温泉(竹田市)。かつて岡藩の藩営温泉として始まり、300年の歴史を刻む。その長湯がいま、薬膳料理の町として注目されつつあるという。

 「健康食として、長湯の特色の味にしたい」を合言葉に、複数の宿の若手経営者や料理人が結集。数年前から地元の食材を主体にした薬膳料理の研究を始め、旅館などで提供している。

 その実践の場の1つが、温泉・飲食施設の「万象(ばんしょう)の湯・天恵塾(てんけいじゅく)食堂」である。長湯を流れる芹川のほとりにあり、薬膳料理を手ごろな料金で味わえる(昼食は1200円から、夕食は1800円から)。

 野菜、山菜、豊後牛、川魚など県内産の食材で作った素朴な田舎料理が30~40品目。うち3~5品目を、生薬や漢方薬にも使うクコの実やハスの実といった材料を加えた薬膳料理として出している。大皿に盛ったバイキング形式で、好みの料理を小皿に取り分けて気軽に食べることができる。

 薬膳といっても、中華風の香辛料が利いた料理ではない。和風料理や洋風料理のなかにさりげなく使う。訪れた日には「クコの実入り薬膳パスタ」や「薄荷(はっか)入りジャガイモ団子の竜田揚げ」などが並んでいた。

 メニューは薬膳料理研究家の千代田美知子氏の指導を受けて考案した。「薬膳」をうたう料理だけでなく、すべての料理に体に優しい素材の組み合わせを心がけているそうだ。

 田舎料理らしく、全般的にやや濃いめの味付け。東京出身の私らにはピッタリで、食べ過ぎを心配しなければならないほど食がすすんだ。

 敷地内には素泊り湯治棟「宝積翡翠楼(ほうしゃくひすいろう)」を併設。樹齢300年の杉、ひのきを主にした建物に、和室4室、ひとり用洋室2室がある。立ち寄り湯もできる大浴場「万象の湯」は黄金色の膜が張る源泉が掛け流しだ。外には、芹川を眺めることができる露天風呂がある。

 「少しぬるめの湯ですから長湯をして下さい」と黒木明支配人。料理長の吉野祐紀さんは「薬膳と合わせて、温泉は新陳代謝を促進します」と話す。実際、体の芯までよく温まった。

 宿は高台の旅館「友喜美(ゆきみ)荘」に取った。主人の中村国勝さんは、長湯での薬膳料理の取り組みを主導するひとり。宿でも和食に薬膳を取り入れた懐石料理などを手掛けている。温泉で炊いた朝食のご飯は、胃腸への刺激がよく、おかわりを求めたほどだった。

 翌日、芹川沿いの道を歩いた。河原の中に白濁した湯があふれる露天風呂「ガニ湯」があり、誰でも自由に入れる。早速、せせらぎの音を聞きながら、昼の露天風呂を楽しんだ。

 湯治の町、長湯には共同浴場が多い。このほか、身体中に炭酸の泡がまとわりつく「ラムネ温泉館」、市営の「御前湯」や「天満湯」などがある。

 浴場だけでなく、2008年春には別荘地風の新タイプの湯治用の滞在施設「B・B・C長湯」が誕生。私もかかわらせてもらった山岳関連の書籍を集めた「林の中の小さな図書館」を併設しており、湯治の合間に本を読むなど、ゆったりとした時間をすごすことができる。

 「食」を含めた湯治場の新しい形を体験するなら、長湯ほどふさわしいところはないと思う。

(旅行作家 野口 冬人)
by mo_gu_sa | 2010-04-24 00:00 | 大分


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