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「生の声」から人権学ぶ 九州看護福祉大 4年目迎えた公開授業

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 ハンセン病や水俣病、薬害肝炎などの被害者たちを講師として招き、人権問題について学ぶ九州看護福祉大(玉名市富尾)の公開授業「社会福祉 特講1」が、今年で4年目を迎えた。講義は主に社会福祉学科の1年生に実施。将来、福祉や医療の現場を担う若者の人権意識を高めている。一般市民の参加も目立ち、人権意識の啓発にも役立っている。

■衝撃が第一歩

 「ハンセン病は完治する病気。だから今、この病気自体の治療をしている人は療養所にいません。私たちに重くのしかかっているのは病気ではなく、社会にある偏見や差別です」

 22日午後、九州看護福祉大の大教室。国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」(合志市栄)の入所者で、自治会副会長の志村康さん(77)の言葉に、会場を埋めた学生ら約120人が息をのんだ。

 志村さんが公開授業で話すのは4年連続。中学生時代の強制隔離や自らの病気が理由で弟の婚約が破談になったこと、そして黒川温泉のホテルで起きた元患者たちの宿泊拒否事件…。軽妙な語り口ながら、その内容は、差別や偏見と闘ってきたハンセン病元患者の歴史そのものだ。

 志村さんが「社会のあらゆる差別に毅(き)然(ぜん)と立ち向かうべきだ。私は生きている限り『差別はいかん』と訴え続ける」と締めくくると、拍手がわき起こった。

 講義を聴いた学生たちは「病名は知っていたけど、知らない話ばかりでした」と、ショックを受けた様子だった。

■当事者の言葉

 講座を開くきっかけは2003年末、人権週間に合わせて同大が玉名市で開いたシンポジウム。志村さんと薬害エイズの被害者、川田龍平さん(現参院議員)が理不尽な差別や偏見との闘いを市民や学生たちに語った。

 人権侵害を受けた当事者の「生の声」を聞く貴重な機会。「定期的に開いてほしい」という声が学内で上がり、公開授業は07年度から始まった。一般市民も含めた聴講者は延べ6千人に達するという。

 今年度の講義は4-7月の15回で、外部講師が10回強を担当する。薬害C型肝炎訴訟の原告や胎児性水俣病患者も登壇する予定で、障害者や路上生活経験者の講義も計画している。

 二塚信学長は「当事者の声から、自分の将来はどうあるべきかを学生が考える重要な機会。地域貢献にもつながる」と狙いを語る。

■現場でも期待

 課題は学生たちが講義をうまく今後に生かせるかだ。

 「講義後、図書館で関連資料を探す学生もいるが、そのスキルを持たない1年生も多い」(担当の山本務教授)ため、同大は、学生たちに文献収集の方法などを別の時間に指導し、学習成果にできるよう配慮している。

 公開授業には関係者の期待も大きい。玉名市社会福祉協議会の福山義之総務課長は「障害者や高齢者への虐待などが社会問題となる中、福祉現場では、特に人権意識の高い人材が必要になってきた。とても良い試みだと思う」と評価している。

【写真】九州看護福祉大の公開授業で、志村康さん(右手前)の話に聞き入る学生たち=22日、玉名市

=2010/04/25付 西日本新聞朝刊=
by mo_gu_sa | 2010-04-25 00:43 | 熊本


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