http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/123023
今年も、山あいにある温泉街に「映画館」が開館する季節になった。19―22日、佐賀市富士町である「古湯映画祭」だ。旧富士町時代の1984年、映画館のない町を映画で盛り上げて活性化しようと、地元住民手づくりで始まった映画祭も、回を重ねて26回目を迎えた。 「喜劇・日本人の心を求めて」など、毎年テーマを変えて映画ファンを楽しませてくれる映画祭だが、今回は趣が違う。対馬海峡を挟む福岡、佐賀、長崎、山口4県と、韓国側の釜山市など1市3道が共催者になり、「古湯日韓海峡圏映画祭」と銘打って開催されるからだ。 この8自治体は92年から日韓海峡知事サミットを開いて、国家間の外交とは一線を画した首長による草の根外交を展開し、相互理解を深めてきた。 2007年からは若者文化に焦点を当てた交流事業を続けており、今年は四半世紀の伝統を持つ古湯映画祭とドッキングする形で初の映画祭を企画し、日韓の文化交流を深めることになった。 上映されるのは「嫌われ松子の一生」「解夏(げげ)」など日本映画7本と、「風の丘を越えて/西便制」「愛サラン」など韓国映画6本の計13本だ。別に、日韓の若者による映像作品も披露される。 韓国女優のオ・ジョンヘさんや佐賀県出身のイラストレーターで作家の326(ミツル)(本名・中村満)さんらを招いたシンポジウムもある。「古湯が町づくりの核にする『映画』を通して、日韓の相互理解が進めばうれしい」と佐賀県国際課は言う。来年は古湯映画祭とは離れて、韓国の済州島で開催する予定だ。 アジア映画は福岡市でも楽しめる。 アジアをテーマにしたさまざまな行事が繰り広げられる「福岡アジアマンス」の一環として、「第19回アジアフォーカス・福岡国際映画祭」が27日まで、市内各所で開催中だ。 こちらはアジア16カ国・地域の25作品を上映し、映画を通してアジアのいまを体感できる。今年は福岡市と釜山市の行政交流都市締結20周年を記念した「福岡-釜山友情年」にちなみ、「酒を呑(の)むなら」など最新韓国映画の特集もある。 どの作品も、喜びや悲しみなど人々の日常を描きながら等身大のいまのアジアを表現しており、力作がそろう。 外国映画の鑑賞は、日本人が他国の文化や習慣、そこに生きる人々の心を理解するうえで貴重な機会だ。ほかの国と陸続きではない島国に住む私たちは、外国人に対しても自分たちの文化や価値観を基準に物事を考えやすい。それが無用の摩擦を生むことも少なくない。 異なる文化を認め合うことこそ、国際理解を深めるのに一番重要なことである。優れた映画は、その手助けをする手段としても有効だろう。 この大型連休中、佐賀の温泉地で、あるいは福岡で、躍動する多様なアジアを感じてみてはどうだろう。 =2009/09/19付 西日本新聞朝刊=
by mo_gu_sa
| 2009-09-19 10:48
| 佐賀
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