http://www.jiji.com/jc/c?g=jfn&k=2009031600662
「よへほー、よへほー」-哀愁が漂う歌にのせて、灯籠(とうろう)を頭にかぶった浴衣姿の女性たちが、あでやかに舞う。九州の夏祭りとして名高い熊本県山鹿市の伝統行事・山鹿灯籠踊り。山鹿灯籠師組合の組合長を務める中島清さん(63)は、灯籠作り30年のベテランで、温泉街に数百年前から伝わる独自の文化を支えている。 中島さんの父・二人さん(故人)も灯籠師だったが、もともとの家業は時計店。「灯籠はどこでも本業でやっていたのではなく、山鹿の旦那(だんな)衆が作って奉納するものだった」という。しかしその伝統も、現在は灯籠師が7人前後と存続が危ぶまれる状況にある。県重要無形文化財保持者だった父の後継者として、この世界で生きていく決意を固めた。 山鹿灯籠の材料は和紙で、木や金具を使わず、接着剤(のり)だけで組み上げていく。灯籠の頂点に付く擬宝珠(ぎぼし)は、すっきりした曲線を出すため、のりしろを取らずに和紙の切断面(小口)同士を慎重に接着する。そのコツは「切り口を斜めに切って、すき間があかないようにすること」。ごく少量の接着剤で中島さんが組み立てた擬宝珠は、紙1枚のパーツから作られたとは思えないほど丈夫に仕上がった。 中島さんは灯籠だけでなく、山鹿市のシンボルである芝居小屋「八千代座」など、建築模型も和紙で制作する。室内まで精巧に作り込んでいるが、ほとんどの場合、実際の建物の図面は利用しない。「資料は写真だけ。その方が(実物の縮尺に)制約されずに作れる」と語る。これから制作を予定しているのは、建て替えが決まった歌舞伎座(東京・東銀座)。八千代座で公演した坂東玉三郎さんが中島さんの技術を見て、模型化を依頼したという。 中島さんらの努力が実り、最近は灯籠師を目指す若い人も現れた。山鹿市は近年、夏だけでなく真冬の2月に「山鹿灯籠浪漫・百華百彩」と名付けて観光イベントを展開。八千代座で灯籠踊りの公演も行われ、地元住民や観光客で連日満員の盛況ぶりだ。「この仕事は好きでなければやっていられませんよ」。店の作業机で灯籠を1つ仕上げ、中島さんは穏やかな笑みを浮かべた。(写真は時事ドットコム編集部撮影) 【もぎたて便】(2009/03/17-09:20)
by mo_gu_sa
| 2009-03-17 09:20
| 熊本
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