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幕末の長崎に渡り、九州の商業や産業の近代化に貢献した英国商人フレデリック・リンガー(1840‐1908)とその一族の功績と足跡にあらためて光を当てる研究が進んでいる。一族が長崎を離れて約70年。英国に住むひ孫のエリザベス・ニュートンさん(71)が19日、長崎市のグラバー園内にある旧リンガー邸を訪ね、同園名誉園長のブライアン・バークガフニ長崎総合科学大教授に思い出を語った。 「私がここで過ごしていたころの写真を見ると、とてもハッピーに見えた。ここにいると、海や港、山や坂の記憶がよみがえってくる」 幼少期を長崎で過ごしたエリザベスさんは、旧リンガー邸から一望できる長崎港の眺めに声を弾ませた。 リンガーは1864(元治元)年ごろ、幕末の志士との交流で知られるスコットランド商人トーマス・グラバーの招きで来日。グラバー邸近くに居を構え、68(明治元)年にグラバーの事業を引き継いで「ホーム・リンガー商会」を設立した。 一族は、貿易や底引き網漁、捕鯨、保険、ガス、ホテル経営、新聞など幅広く事業を展開し、日本の近代化に大きく寄与したが、太平洋戦争が迫り外国人に対する迫害が激しくなった1940(昭和15)年、商会を閉鎖し追われるように長崎を離れた。 「愛する人や友人との別れがとてもつらかったからでしょう」。エリザベスさんによると、リンガー家の人々がその後、長崎の思い出を語ることはほとんどなかったという。 昨年11月、約70年ぶりに旧リンガー邸を訪れたエリザベスさんはグラバー園に自身の幼少時の姿も写った一族の写真6枚を寄贈。今年も9月に来日し、今月18日から24日まで長崎県内に滞在し島原半島の雲仙温泉など一族ゆかりの地を巡るという。 長崎居留地の歴史を研究しているバークガフニ名誉園長は今年8月、英国で暮らすエリザベスさんたちを訪ね、一族が保管していた当時の写真や手紙など段ボール一箱分の資料を調査した。今後、一族に関する新資料を基に本や論文をまとめるほか、旧リンガー邸内のソファやベッドなどの内装も忠実に再現したいという。 バークガフニ名誉園長は「『政治はグラバー、経済はリンガー』と言われるほど貢献したが、多くの謎に包まれていた。貴重な資料が見つかり、一族と長崎との関係が再び深まったことを契機に、一族の歴史や功績を広く伝えたい」と話している。 【写真】旧リンガー邸の応接室で当時の写真を見ながら思い出を語るエリザベス・ニュートンさん(左)とブライアン・バークガフニ教授 =2008/10/20付 西日本新聞朝刊=
by mo_gu_sa
| 2008-10-20 01:35
| 長崎
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