http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080625k0000m070138000c.html
国土交通省の外局として「観光庁」が10月1日に発足する。公務員や行政組織をもっとスリムにという折も折、新たに看板を掛けるのだから、その必要性や使命、戦略を国民に明快に提示しなければならない。 なぜ今、観光庁なのか。 「観光ビッグバン」とも呼ばれる世界的な自国外への旅行ブームの中で、積極的に「観光立国」をうたい、日本への受け入れを総合的に推進する機関。省庁、自治体に複雑にまたがり、円滑な遂行ができない観光行政を改め、効率的に調整・統合・推進する--。こうしたことが挙げられるが、縄張り主義や前例主義を完全に一掃しないかぎり、絵に描いた餅になる。そして旧来の発想を転換する新しい視点が不可欠だ。 統計によると、06年度の国内観光の消費額は23兆5000億円に上り、雇用誘発効果は442万人で全就業者数の6.9%になる。訪日外国人による消費額は1兆4000億円に上る。 訪日外国人数の伸びが著しい。03年に521万人だったものが、07年には835万人になった。このペースだと、政府が誘客キャンペーンの目標としてきた10年に1000万人という目標は達成しそうだ。 アジアからの訪日旅行が増えたからだ。07年の内訳を見ると韓国が31%、台湾が17%などアジアからが73%を占める。所得の伸びや海外旅行ブームなどが反映しているとみられる。韓国の人たちは九州での温泉やゴルフ、台湾の人たちは北海道など北国を好む傾向がある。また、ネット情報などを通じ人気スポットに詳しいのも近年の特徴だ。 一方、日本人の旅行熱はやや冷め気味という。07年の国内宿泊観光旅行の1人当たり回数は2年連続で落ちて1.54、宿泊数も2・47になった。海外旅行者も減っている。国交省は「余暇を外食やテレビゲームなど手軽なレジャーに使う傾向があるようだ」というが、観光についてのニーズや価値観の変化も考えられ、早急な分析が必要だ。 旅へ向かう心とそれを迎えてもてなす心は日本が長く培ってきた伝統文化であり、訪日客が増えている背景の一つでもあろう。経済的波及効果だけではない。国や地域を超え、人と人の出会い、交流が進み、相互理解が深まる意義深さは計り知れない。それはいわば「武器なき安全保障」だ。 管轄・権限の壁を崩す突破力、誘客や常連客の獲得に実績を上げている地域・団体のノウハウを共有するシステムづくり、独創的なアイデアの迅速な政策への反映など難題は山ほどだ。「お役所仕事」を排し、庁内百余人のスタッフも民間の一線にある経験豊かな人たちを大胆に抜てき、登用すべきだ。それがまず重要なメッセージとなる。 国民は「もう一つの役所」を望んではいない。 毎日新聞 2008年6月25日 0時00分
by mo_gu_sa
| 2008-06-25 00:00
| 温泉一般
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