http://www.sankei.co.jp/books/news/070219/nws070219001.htm
大阪の庶民生活の哀歓を描いた織田作之助(大正2~昭和22年)の小説「夫婦善哉(めおとぜんざい)」の未発表の続編原稿が、鹿児島県薩摩川内市の「川内まごころ文学館」で見つかり、雄松堂出版(東京)が9月に出版予定の論文集に収録する。舞台は九州に移り、涙を誘うハッピーエンドになっている。 「続夫婦善哉」はB5判200字詰め原稿用紙99枚。同市出身の「改造社」創業者、山本実彦の遺族が文学館に寄贈した小説の生原稿、書簡など約250点を調査した紅野敏郎早稲田大名誉教授(近代日本文学)らが発見した。 大阪出身の織田作之助は太宰治、坂口安吾らとともに無頼派として知られる作家。代表作「夫婦善哉」は昭和15年、改造社の雑誌「文芸」7月号に掲載。曽根崎新地の芸者蝶子が妻子ある柳吉と駆け落ちし、彼の道楽癖に振り回されながら奮闘する姿を描き、2人が法善寺境内でぜんざいを食べる場面で終わる。 続編は1年後の設定で、小倉の競馬場で大もうけした柳吉は蝶子を伴って別府に移住。温泉客を当て込んでかみそり店を始め繁盛するが、やがて戦時の金属統制で仕入れに困る。2人を敬遠していた柳吉の娘から結婚式に招待され、2人は海路大阪へ向かうことに…。 蝶子が大分・宮崎県境まで行商に出たり、柳吉が山口県の俵山温泉に遊びに行くほか、京都や神戸を描いたくだりも。「国防婦人会」の幹事を務める蝶子が、入営の決まった弟を見送るシーンもあり、前作と違って戦時色が色濃い。 紅野名誉教授は「続編は『文芸』の15年9月号に掲載される予定だったが、釣り鐘でも拠出せよという時代に金属統制を描き、ふやけた男の話でもあるので、編集部が時局にそぐわないと掲載を見送ったのではないか」と推測する。 同文学館の浜崎望専門主幹は「当時の別府の風景描写も興味深い。モデルとされる織田作之助の姉夫婦は実際に別府に移り住んだ。彼も別府を訪ねており、その際に取材したのだろう」と話す。 同館では、出版に合わせ原稿を展示予定。
by mo_gu_sa
| 2007-02-19 21:41
| 鹿児島
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