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滅びゆく生物たち(4) オンセンミズゴマツボ

世界で唯一温泉好きの貝
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/oita/feature/oita1290561798962_02/news/20101214-OYT8T00675.htm滅びゆく生物たち(4) オンセンミズゴマツボ_e0113829_163138100.jpg

 世界で唯一、温泉の中で生きる巻き貝といわれるオンセンミズゴマツボ。それは意外にも、観光客でにぎわう由布市内の温泉街に潜んでいた。

 詳しい場所は、九州貝類談話会副会長の浜田保さん(73)から事前に教えてもらっていた。だが、なかなか見つからず、温泉がわき出る様子をぼう然と眺めていると、湯の中の石で、ゴマ粒ほどの黒い点が、わずかに動いたように見えた。

 そっと指先に乗せ、資料写真と見比べて、オンセンミズゴマツボと確認。改めて湯の中を見つめると、少なくとも数十個ほどが、身を寄せ合うように石にへばりついていた。

 かつては、別府市などでも見られたが、観光施設の開発が進んだことなどが原因で消滅。今は由布市内でしか確認されていない。浜田さんらの調査によると、その由布市の生息地でも、1981年は約600個体だったが、今年3月には100~200個体に激減した。

 今年3月、県希少野生動植物に指定されたが、具体的な対策はまだ取られていない。「10万種ある貝類の中でも、温泉につかって生息するのはこの貝だけ。由布市は地球上で唯一の生息地なのですが……」。浜田さんは危機感を募らせている。

 小さな命を守る小さな湯つぼ。周囲では、コンクリートやアスファルトに塗り固められた、乾いた世界が広がる。その湯けむりは、寒風にはかなくかき消されていた。(小松一郎)

 オンセンミズゴマツボ

 長さ4ミリ、直径2ミリほどの小さな淡水巻き貝。36~45度の温泉の中で生息する。観光による開発などで生息環境が脅かされ、環境省のレッドデータブックでは、現状のままでは野生での存続が困難な「絶滅危惧(きぐ)1類」に分類されている。

【写真】長さ3ミリほどのオンセンミズゴマツボ(由布市内で)

(2010年12月14日 読売新聞)
by mo_gu_sa | 2010-12-14 00:00 | 大分


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