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SL復活1ヵ月 満席続き沿線に活気 宿泊客取り込みなど課題

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 JR九州の蒸気機関車「SL人吉」が熊本県の熊本‐人吉間で4月25日に運行を開始して1カ月が過ぎた。九州で4年ぶりに復活したSLは連日、満席が続く好調なスタートを切っている。停車駅を抱える人吉球磨地方は「100年に一度のチャンス」(地元首長)として、SLを起爆剤にした町おこしに期待を膨らませている。

 午後0時13分、JR人吉駅に黒光りするSL人吉が到着した。ホームに大勢の見物客やカメラマンが集まってくる。5月24日までの1カ月で19日間運行し、往復で約5000人が利用した。乗車券は連日、発売と同時に売り切れ、1カ月先まで満席という。

 人吉駅の東浩2駅長は「上々の滑り出し。九州はもちろん、関東や関西からも鉄道ファンや家族連れが利用している」と手応えを語る。

 今年は11月末までの金、土、日曜と祝日、夏休みなど125日間、運行する予定だ。

 熊本‐人吉間の所要時間は2時間半。3両の客車では最後尾に展望ラウンジが設けられ、途中にある6つの駅に停車しながら、日本三大急流の球磨川沿いの風景をゆっくりと眺めることができる。北九州市から来た利用客の女性は「雰囲気は最高。人吉で温泉を楽しみたい」と話し、改札口を出て行った。

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 SL人吉は沿線にも活気を及ぼしている。産交バス(熊本市)がSLと同時に運行を始めた人吉駅周辺を回る周遊バス「じゅぐりっと号」は、この1カ月間で約2750人が乗った。レトロの感覚あふれるボンネットバスは毎日10便運行しているが、SLが運行した日の利用客は平日の4倍という。

 巡回先の1つ、国宝の青井阿蘇神社も5月の連休の参拝客が前年比3割増。同神社の関係者は「国宝指定にわいた昨年よりも参拝客が増えた。家族連れが多く、SL効果に違いない」と話す。

 人吉駅の四つ隣にあり、SLが停車する一勝地(いっしょうち)駅(球磨村)では「お守り」として、受験生に人気がある入場券の5月の売り上げが昨年の3倍になっている。

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 SL効果でにぎわう駅前や沿線の人たちに比べると、人吉市の旅館関係者の表情はさえない。駅周辺には十数軒の旅館やホテルがあるが、SL運行後、宿泊客の増加は多いところで「1割程度」。「思ったほど伸びていない」という旅館もある。人吉市の旅館の女将(おかみ)でつくる「さくら会」の富田千鶴子会長は「観光客の多くがまずSLに乗ることが目的。人吉観光が主目的になっていない」と分析する。

 鹿児島県境に近い熊本県南部の人吉球磨地方は、小さな町村がいくつもあり、公共交通網に乏しい弱点を抱える。しかし、球磨川には江戸時代から続く川下りがあり、近年は夏場のラフティングが若者に人気だ。人吉周辺にも「五木の子守唄」や川辺川の清流で知られる五木村や、九州最大の観光鍾乳洞「球泉洞」がある球磨村など観光地が多い。

 「SLは人吉の名を全国に広めるバルーン」と人吉市の田中信孝市長が言うように、SLを目的にやって来た観光客を地元にどう滞在させ、周辺に回遊させていくのか。官民が知恵を絞ることが観光地として飛躍する鍵といえる。

 (中野剛史)

【写真】球磨川に架かる鉄橋を疾走する「SL人吉」。観光振興の起爆剤として地元の期待は大きい

=2009/06/01付 西日本新聞朝刊=
by mo_gu_sa | 2009-06-01 00:11 | 熊本


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